過度な値下げが起きにくい状況ではブランド力で売りやすい。そうか。
値下げをしなくても価格の優位性があればさらに良い。
下の価格帯には価格で比較せずに高品質のもたらす体験で差をつけよう。
2016/2/23 5:30
「今期はいい事業環境ですよ」。17日、ブリヂストンの2015年12月期決算会見で、同社の江藤彰洋最高財務責任者(CFO)は穏やかな表情で語った。円高進行を背景に16年12月期は7年ぶりの連結経常減益の見通し。市場の期待も大きく下回る内容にもかかわらず余裕が垣間見えた。そのワケはなにか。
記者会見するブリヂストンの江藤彰洋CFO
同日発表の16年12月期見通しは連結売上高が前期比1%減の3兆7500億円、経常利益は4%減の4870億円と7年ぶりの減収減益。米ドルとユーロの為替レートはそれぞれ前期より6円、7円の円高を想定する。この円高による目減りは売上高で2040億円、営業利益で410億円に達する。増収増益が続いたここ数年のトレンドから一変する。
世界の自動車大手が堅調な決算見通しを示す中で、市場では世界最大のタイヤメーカーへの期待は大きかった。直前の市場予想平均(QUICKコンセンサス)は売上高が3兆9900億円、経常利益が5434億円で、その落差が大きかっただけに発表の翌18日は相場全体が大きく上げた中で、前日比2%安と逆行安を演じた。
それでもCFOが余裕をみせるのはなぜか。決算で示された情報の中で、注目すべきポイントは原材料価格の動向と、販売量・販売価格の収益へのプラス・マイナスを総合した「売値ミックス」だ。まず増益要因としては原材料安がある。今期は足元の原油安を背景に合成ゴムや天然ゴムなどタイヤの原材料価格が下がり、620億円の利益押し上げ要因となる。
この原材料安だが、実は前期はほぼ2倍の1210億円もあった。ただし、そのまま増益につながるかといえばそうではない。原材料価格が下がるとタイヤの値下げ原資も当然、膨らむ。販売先からの値下げ圧力も強まる。そのため前期はタイヤ各社が「想定を超える値下げ合戦」(タイヤメーカー幹部)を繰り広げた。その結果、販売価格が下がり、ブリヂストンの売値ミックスはネットで1288億円の減益要因となった。原材料安の恩恵をほぼ打ち消した。
今年は状況が違う。昨年と違い、原油価格には一部底入れの兆しも出始めており、天然ゴムも「これ以上の価格下落は生産者の経営が成り立たない」(ブリヂストン幹部)とみられている。そのため昨年のようなタイヤの乱売合戦はおきにくい。タイヤ販売の伸びもあり、ブリヂストンの今期の売値ミックスは167億円の増益要因に転じる。江藤CFOの言う「いい事業環境」はそういう意味だ。
過度な値下げが起きにくい環境は、ブランド力や販売力で他社に勝るブリヂストンにとって「他社との格差をつける好機」だろう。実際、今期は過去最大の販管費を投入。営業利益ベースで400億円の減益要因になるが、その代わりにパンクしても走るランフラットタイヤや低燃費タイヤなど得意の高性能商品の販売を伸ばして付加価値を稼ぎにいく構えだ。SMBC日興証券の松本邦裕シニアアナリストは「タイヤ販売は増えており、本質的には悪い決算内容ではない」と分析する。
横浜ゴムをはじめ国内のライバル会社も昨年ほどの原材料安効果を見込んでいない。過度な消耗戦にはならない環境は整った。見た目は悪い7期ぶり減益だが、実はさらにシェアを拡大して最終的には利益上積みを狙う。そういうブリヂストンの本音が透けてみえる。
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