大金変化が起きる時は両面を考えることが大事ね^^
2016/2/12 5:30
「(金利の低下による)利子生活者の安楽死」を予想したのは他ならぬ経済学者のケインズだが、さすがにマイナス金利までは想像していなかったかもしれない。「金利」が商売道具の銀行にとって、「利ざや」の縮小はまさに死活問題だ。日銀がマイナス金利政策を公表する直前の1月28日から2月10日まで、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の株価は27%も下落した。だが、マイナス金利は同時にMUFGに隠れた「ボーナス」を与えた。
マイナス金利がもたらす「含み益」は突出しているとの試算も(三菱東京UFJ銀行本店)
マイナス金利は価値観が逆転する「鏡の世界」だ。これまで欲しかったものが突然いらなくなる。メガバンクが預金の受け入れ制限を検討するのは象徴的だ。
だが中にはこれまでいらなかったものが思わぬことに役立つケースもある。実は銀行が保有する国債もその1つ。3メガバンクは近年、国債を「リスク資産」とみる金融規制の議論もあって保有額を大幅に減らしてきたが、マイナス金利は一転して国債の保有者に大幅な含み益をもたらすことになった。
ドイツ銀行の試算によると、国債の利回りがすべての年限で0.1%低下(国債の価格は上昇)した場合、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が得る含み益は実に1000億円に上る。MUFGの保有国債は平均残存期間が3年強。3年物国債の利回りをみると、10日はマイナス0.25%と1月28日からは0.22%低下した。単純に計算すれば、ざっと2200億円分の利益が生まれたことになる。
この「ボーナス」はMUFGが突出して高く、ほかの2メガは4分の1ほどにとどまる。MUFGの円債保有額が31兆円と三井住友(14兆円)やみずほ(18兆円)の両フィナンシャルグループより大きいためだ。国債は取引の担保などに一定量必要で、三井住友やみずほはその下限に近い。つまり、国債を売れば、その分割高になった国債を新たに買う必要がある。MUFGはまだ売り残しがあるため、今後日銀への国債売却を通して含み益が実現していく公算が大きい。
2012年に主要行で先駆けて国債売却を始めたのが三井住友銀行だった。三井住友はそこで得た資金で上場投資信託(ETF)を買い、大きな利益を生んだとされる。この際、MUFG傘下の三菱東京UFJ銀行は国債売りに動かなかった。国債売却を本格化するのは14年の追加緩和以降だ。単に出遅れた、という訳ではない。「3メガ銀が同時に売れば、国債の需給バランスが崩れる。市場全体の秩序を守るトップバンクとしての立場を貫いた」と首脳は強調する。
大企業の救済や金利設定など、実にさまざまな判断のなかで、トップバンクはその多大な影響を考慮しなければならない不自由さに縛られる。「その国のトップの銀行というのは、その国の経済に責任を持たなくてはならない」。首脳は、銀行だけの経済合理性だけで判断しないと言い切る。確かに海外買収戦略でも、三菱東京UFJ銀は戦略の自由度を優先してあえて地域の最大手銀行と組まない戦術をとってきた。三井住友銀行はカンボジア最大手のアクレダ銀行に、みずほ銀行はベトナム最大手の国営商業銀行ベトコンバンクに、それぞれ出資しているのとは対照的だ。
経営統合から10年間、トップを走り続けてきた三菱東京UFJ銀。だが「責任」を負った日本経済はデフレから抜けきれずに低空飛行を続けた10年だった。マイナス金利に端を発した市場混乱で、先行きはいっそう見えにくい。銀行が果たすべき役割とは何なのか。マイナス金利は根本的な問いを突きつける。
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